各赤外線の性能比較一覧表

赤外線ヒータは、発熱体(抵抗)へ電流を流し、数百℃~数千℃に発熱させることで、 多くの赤外線を放射させ加熱することを目的とした製品です。赤外線には、電磁波のピーク波長によって、近赤外線・ 中赤外線・遠赤外線の3種類に分けられます。この3種類の代表的製品として、近赤外線ハロゲンヒータと中赤外線カンタルヒータ・ 遠赤外線セラミックヒータの性能比較一覧表がこちらです。各赤外線のメリット・デメリットについて、項目別に◎・〇・△・✖ の4段階で評価しました。

近赤外線
ハロゲンヒータ
中赤外線
カンタルヒータ
遠赤外線
セラミックヒータ
熱源温度
熱源立上り/立下り時間
応答性
被加熱物温度到達の速さ
クリーン度
省スペース
耐熱衝撃性 ×
熱源温度管理 × ×
寿命

熱源温度

熱源温度は各赤外線ヒータの発熱部の温度です。各赤外線ヒータの熱源温度は以下の通りです。

近赤外線 中赤外線 遠赤外線
熱源温度 ℃ 2000~3000 800~900 500~700

この熱源温度は対象物を加熱する際の目標温度、昇温速度に関係致します。
例えば、対象物を1000℃にしたい場合には、遠赤外線・中赤外線共に熱源温度以上になりますので、これらのヒータでは1000℃までは加熱できないということになります。
また、熱源温度と対象物の目標温度の温度差ΔTが大きい方が早く加熱できることが多く、急速に加熱したい場合には熱源
温度の高いヒータを選定するということが必要です。
※熱源温度=対象物の目標温度ではありません。

熱源立上り/立下がり時間

まず、各赤外線ヒータの立上り時間/立下り時間の目安としては、以下の通りです。

近赤外線 中赤外線 遠赤外線
時 間 2秒 3分 10分

※中赤外線、遠赤外線でも一部短い製品もあります。


立上りの遅いヒータの場合、常時点灯しておかなくてはなりません。
それに対し、立上りの早いヒータの場合、対象物が通過する時だけONし、それ以外の時にはOFFするという使い方が可能で省エネにつながります。 省エネ実現のためには立上り時間の早いヒータを選定することも一因です。


つぎに立下りにおいては、遅いと緊急・非常停止時の安全対策に考慮すべき点が増えてきます。
具体的には緊急・非常停止した際に、ヒータへの電源は遮断しても、ヒータ温度(熱源温度)はすぐには下がりません。
その結果、対象物の焼損や最悪火災を引き起こす可能性があります。
したがって、立下り時間の遅いヒータにはヒータ退避機構やヒータからの赤外線を遮断するシャッターが必要になります。 運用を見据えた場合、緊急時の挙動として何が求められるかを考慮することもヒータ選定の一要素なります。

応答性

立上り/立下りと似た項目ではありますが、ヒータの出力設定を変更した場合における「追従性=応答性」としています。
応答性の遅いヒータは出力設定を変更しても、設定値に至るまで時間がかかるため、温度が安定しにくいことがあります。 一方、応答性の早いヒータは出力設定を変更した際、設定値に至るまでの時間が短いため、温調(フィードバック)制御が
でき、精度の良い安定した制御が可能です。
加熱温度の精度を求める場合、応答性の早いヒータを選定する必要があります。

被加熱物温度到達の速さ

これは加熱時における対象物が目標温度まで到達する時間の速さです。
熱源温度とも関連しますが、一般的に熱源温度が高い方が昇温速度は早いことが多くなります。ヒータと目標温度の温度差ΔTが大きいほど、時間は短くなる傾向にあります。そのため、少しでも加熱時間を短縮したいという目的には、熱源温度の高いヒータを選定することも検討すべきです。

クリーン度

ヒータは使用中に発塵や異物が出るものがあります。遠赤外線:一般的なセラミックパネルヒータなどは、
「ヒータON/OFF=膨張/収縮」を繰り返すことで発塵することがあります。一方、中赤外線・近赤外線はガラス管の中に発熱部(フィラメント)が収納されている構造であるため、発塵は発生しません。近赤外線ハロゲンヒータにおいては真空環境下でご使用されている事例もあります。半導体や医療業界などで使用する場合には、クリーン度の高いヒータを選定することをおすすめ致します。

省スペース

これはヒータのエネルギー密度(kW/m2)と関係します。各赤外線ヒータのエネルギー密度の目安は以下の通りです。

近赤外線 中赤外線 遠赤外線
エネルギー密度kW/m2 120kW以上 50~100 30

ある対象物を加熱する場合、対象物の材質・サイズ(質量)・目標温度ΔTにより絶対的に必要な熱量は決まります。
そのうえで、仮にその対象物の赤外線吸収率が同じであった場合、エネルギー密度の高いヒータの方が短時間で目標温度まで加熱することが可能です。R2Rなどの送り加熱の際には短時間で加熱できるというのは、炉長をより短くコンパクトにすることになります。実際には加熱時間は赤外線吸収率も関係してきますが、省スペースを目指す場合、近赤外線はエネルギー密度が高いため有効です。

耐熱衝撃性

ヒータにおいて急激な温度変化がある場合、膨張/収縮という体積変化からヒータが破損することがあります。近赤外線は発熱部(フィラメント)が石英ガラス管内に収納されており、石英ガラスは非常に熱膨張の小さい材料であり使用中、水がかかっても体積変化はほとんど生じず、破損することはありません。

熱源温度管理

遠赤外線:一般的なセラミックパネルヒータは、セラミック部に温度制御用の熱電対が埋め込まれており、その熱電対をもとに対象物温度が目標値となるよう温度制御を行うことが可能です。一方、中赤外線・近赤外線は、前記の通りガラス管ヒータであり、そのような構造をとることができません。そのため、温度制御ではなく電圧・電流などによる電力制御で対象物の温度を調整することが多いです。中赤外線・近赤外線も対象物の温度が計測できれば温度制御が可能ですが、製造工程において対象物に熱電対を付けることは現実的ではありません。そのため非接触温度計(放射温度計)を使用する場合、対象物からの赤外線放射以外にヒータからの赤外線も検知してしまい、精度よく温度を計測することが難しい場合があります。「温度」として制御をかけたい場合はヒータ自体で温度制御ができるヒータか確認する必要があります。

寿命

寿命は熱源温度によりほぼ決まり、熱源温度が高いほど負荷としても高いため寿命は短くなる傾向にあります。「熱源温度が高い≒加熱能力」が高いというメリットはありますが、寿命という点ではデメリットにつながります。
また、寿命=ヒータが切れるという以外において経時変化(出力低下など)の特性は各ヒータで異なります。目的とする加熱において、このような特性もあらかじめ把握しておくことも必要です。



吸収率と透過率

吸収率が良い波長

金属系 1~2μ 近赤外線
樹脂系
水系乾燥
ガラス系
2~4μ 中赤外線
セラミック系 3~5μ 遠赤外線

吸収率とはなにか?
それは、同じエネルギー量を与えた場合に、どれだけ熱に変換されるかという割合です。目安としては上記の通りですが、対象物:樹脂を急速に加熱したい場合、吸収率としては中赤外線が良好ですが、吸収率を差しおいてもエネルギー密度の高い近赤外線を採用することも多々あります。そのため、要望とする加熱が何なのかを踏まえた上でヒータを選定する必要があります。



透過率が高いというのは、対象物に照射された赤外線が吸収されず透過し熱に変換される割合が低いということです。
透過率が低いというのは、対象物に照射された赤外線が透過せず表面で吸収され熱に変換される割合が高いということです。厚みのある対象物において厚み方向の温度をどのようにしたいかによって透過率は考慮する必要があります。
対象物の表面だけを加熱したい場合には透過率の低いヒータでも適当な加熱ができますが、厚み方向をできる限り均一に加熱したい場合には透過率の高いヒータを選定する必要があります。透過率の低いヒータで厚みのある対象物を厚み方向に均一に加熱したい場合、ヒータを両面に設置する必要があります。

以上が前回のメルマガで説明致しました内容の補足となります。細かい話になりますが加熱方法・ヒータの検討の一助になりましたら幸いです。

遠赤外線・中赤外線・近赤外線は分類としては「赤外線」ではありますが、異なった特性を有しています。いずれも特徴であり、絶対的なメリット・デメリットはありませんので、目的とする加熱内容を考慮し、加熱方法・ヒータを選定する必要があります。

どのような加熱方法・ヒータを選定すべきかお困りのことがありましたら、お気軽にご相談ください。
また、現在の加熱方法・ヒータが適当であるのかアドバイスをお求めの際にもご相談ください。

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